吉野 衣里さん(2015年度フレックスコース入学)
私がMPPを受講しようと思ったのは、今後のキャリアを見据えた時に、どの業種・職種でも必須となるマーケティングスキルを身に付けたいと思ったことと、1年生の必修科目のマーケティング基礎の授業がとても面白く、より深く実践的に学びたいと思ったからです。
加えて、MPPを受講された先輩の、「この授業で学んだファシリテーションスキルは業務でも役立つ」とのアドバイスも大きかったです。日頃ミーティングをリードする機会も多く、かねがね進行役に留まるのではなく、しっかりとメンバーの意見を引き出しまとめていくファシリテーションスキルも身に付けたいと思っていた私には願ってもない授業でした。
2016年度のMPPは、株式会社明治さんにご協力いただき、「“明治エッセルスーパーカップ”の更なる成長を実現するためのマーケティング戦略を考える」、というテーマで半年間行いました。MPPを通じて学んだことは①アイデアの出し方(発散と選択)、②常に顧客目線や与件内容を意識すること、③異なる意見の人も巻き込んでいく目線を持つこと、の3つです。
授業は、まずアイスクリーム市場の環境分析と顧客調査にじっくりと時間をかけ、その上でチーム毎に3つの施策案を出し、依頼主にあたる明治さんの意見を伺いながら最終的に一つの提言をまとめていきました。
第一フェーズの3つの施策案策定にあたっては、色々な意見を発散させる、そしてメインとなる軸を決め、それらを掛け合わせて、今までにないアイデアを探る方法を学びました。その過程で、議論には5つのモジュール、すなわちと「共有型議論」「発散型議論」「解明型議論」「選択型議論」「定義型議論」があることを学びましたが、今思い返すと、ここが非常に重要なポイントでした。最初に目的や背景をチームメンバーで共有すること、用語や基準の定義や認識を合わせること、複数の選択肢の中から最適なものを選択すること、などをしっかり押さえていなければ、どれ程時間をかけて議論をしても説得力のない思い付きのような提案に留まってしまうからです。最初にこの重要な点を学び、先生からも議論の着眼点やファシリテーションのポイントを教わったことで、チーム全体で深く考え進めてくことができました。様々なバックグラウンドを持つチームメンバーと議論を深めていくにあたって非常に重要な点であり、それを実践的に学ぶことができたのも、MPPを受講して良かったことのひとつです。
発散のフェーズでは、出てきたキーワードやアイデアを次々にポストイットに書き出し、大きな模造紙に貼りながら意見を出し合いました。つい最終的な着地点を見据えながら小さな議論になりがちだった私にとって、先生からいただくヒントは発想外のものばかりで「このようにアイデアを出していくのか」と楽しみながら進めることができました。次の選択のフェーズでは、どの軸を選んで掛け合わせるか、その組み合わせにはセンスが必要ということも身に染みてわかりました。
2つ目は“「顧客」を知ることの重要性”です。MPPを通じての私たちの「顧客」はアイスの購買者だけでなく、明治さんの2者が該当しました。とくに依頼主の与件内容をしっかりと押さえることが重要で、それを踏まえていないと、いくら良い提案であっても独りよがりのものになってしまうからです。最終的には我々のチームは与件からは異なる層をメインターゲットに設定しましたが、明治さんの意図も踏まえた上で、なぜその考察に至ったかを丁寧に説明することで、「考え方が非常にしっくりきた」というコメントと共に受容していただくことができました。このことからも常に顧客目線にたち、同時に「関係者に伝え説得する能力」も自然と身に付けられたのだと感じました。
3つ目の「異なる意見の人も巻き込んでいく目線を持つこと」、は顧客調査を通じて得たインプリケーションであり、私たちのチームにおける一貫したコアとなる考え方でした。これは実際の業務にも生かされており、反対意見の人も巻き込むにはどうすれば良いか、という発想をもち、丁寧にヒアリングをした上で阻害要因を除いていく進め方ができるようになりました。これにより、より多くの社員の賛同や共感を得て進めていけるようになり、以前より業務もスムーズに行えています。
MPPで学んだ、「自分たちがしたいこと」は顧客目線に立っているか、一部の賛同者だけでなく、全体を巻き込みながら進めていけるものか、という視点をもつこと、加えてチームで議論する際の基本となる考え方は、マーケティングに留まらず、すべての業務において通じるものだと思います。熱心にご指導くださった先生方と、半年間共に議論を重ねたMPPのメンバーは私にとってABSの中でも特別な存在です。