2020年度マネジメント・ゲーム体験記

担当:岩井 千明 教授/福井 一枝 先生

「時間をともに過ごしたメンバーは友人であり宝物」

渡部 学さん

渡部 学さん (2019年度フレックスコース入学)

私は、本マネジメントゲームにおいてCEOの役割として参加し、時計を製造販売するMomentum社の経営を4人チームで3期務めました。この授業は3年生の前期4か月の間に自分たちでメンバー組成して履修を行います。このゲームを通じて得た仲間、先生、そして取締役で参加いただいた方々と有意義な日々を過ごすことができたこの授業を体験記としてお伝えします。

マネジメントゲームの履修こそがABS入学の動機

きっかけは出願前の学校説明会でマネジメントゲームの履修者が行ってくれた科目説明会でした。この授業説明会では、ゲームで作成された取締役会資料をもとにおこなってくれた当時の履修者がわずか4か月という時間の中で経営者として変化をしていく様子に非常に魅力を感じ、この経験が積めるのはABSそしてマネジメントゲームしかないと考え私は青山学院大学のMBAに入学しそして2年目にこの授業を履修しました。

ゲームが提供する秀逸な経営の疑似体験

当授業におけるゲームは、多くの経験者がいうように「経営の疑似体験」がわずか4か月でできるようプログラムが構成されており、この短い間にリアルな経営の世界を疑似体験させてくれる仕掛けが随所にあります。

3年間(四半期x3年の12回の意思決定)の経営はまず自社の設計から始まります。自分たちはどのような経営をして世の中に貢献していきたいのかチームメンバーでディスカッションをして、社名はもちろんのことミッションステートメントや製品名などを設定しリアルな企業として会社や経営チームを設計するところから始まります。その後過去のマーケット分析、財務分析を行い経営・マーケティング戦略、財務戦略、オペレーション戦略を含む3か年の事業計画の作成に移ります。分析対象は2つの製品と6つの世界市場で合計12か所もあるためこの一つ一つの市場特性を丁寧に分析し各市場への戦略を決めるまではまさに定量分析が必須のスキルとなり経営におけるMBAスキルが試される場面となります。

約1か月弱の準備期間を経て3か月のゲームが開始します。1期目のゲーム開始からは、時間との闘いです。高速でPDCAを回し想定と異なる財務数値が出た点については具体的な原因を競合、市場、製品、投資、プロモーション、価格のレベルで仮説検証を行い次の一手を決める日々です。この4四半期1会計期間が終われば取締役会の準備に移ります。私たちの会社の業績は悪くその原因分析や2年目の戦略立案の準備に追われていきます。取締役会は実際に社会で活躍されているABSやカーネギーメロン大学MBAの卒業生や実際に経営に携わる方が担当されリアルで厳しい取締役会となるように工夫されています。株主価値を高めることを期待するこれら社外取締役に囲まれての経営の執行報告は非常に緊張感がありました。業績の良し悪しによるフィードバックはもちろんのこと、報告方法そのものへの指導、執行責任者が受け取る報酬設計に対する助言にまで及び準備する資料枚数は80枚を超え、数時間にも及ぶ取締役会が終わった後は放心状態になりました。この繰り返しを3会計期間行うことで、定量的な分析能力はもちろんのこと経営者としての説明責任の大切さ、タイムマネジメント、メンバー同士の特徴を理解したピープルマネジメントが培われていきます。

途中リアルの現状に合わせた市場環境の変化がシミュレーションに時代ごとに加えられており、私たちのタイミングは、もちろんCOVID-19発生による需要の変化や金利の変化が行われました。調達金利が変わることによる影響を見定めたバランスシートを作る経営、積極的に攻めるのかキャッシュを増やすのか様々な選択とその説明責任が迫られていきます。2年目にはマーケティングプランを競うコンテストが開かれ、この結果が3期目における投資効果に影響を及ぼすため美しく効果的なプレゼンテーションスキルは欠かせません。

EVA(経済的付加価値)を高め企業価値を最大化させる参加チーム共通のゴールに向けて、海外のMBAチームとの競争から学びを得られるこのゲームの3年間は厳しくもあっという間です。そしてこの企業経営を経験したものだけが得られる達成の喜びは本当に格別なものとなりました。

今年度はオンラインを用いる大きな環境変化

いままでの履修者との大きな相違は、新型コロナウイルスが拡がりを見せる中でオフラインからオンラインへの転換でした。振り返れば慣れないオンラインによる運営に当初は不安がありましたが、実際は時間が経つにつれて考えていた以上に効率的な運営ができたように思います。特に授業と仕事を両立することが求められる社会人MBAではいつでもどこでもミーティングが行えるオンラインでのコンセンサス形成とチーム運営は有効であったように思います。加えて私たちのチームは2週に一度は土曜日にオフラインでのコミュニケーションを行うことでチームでの相乗効果を高めることができたと考えています。このようにオンラインとオフラインの両方を使える今の環境はよりマネジメントゲームを深く学習できる環境になったのではないでしょうか。実際の世界でも、コロナが収束した後もオンラインとオフラインを融合したチーム運営・会社経営が求められていく中でこのような体験を早い段階から実践できたことは私たちの強みになったように思います。

トコトン議論を尽くした最高の仲間ができる

この体験記を書くにあたり、過去のファイルを見直していたところ、経営3年目最終期目前にCEOからメンバーへメッセージを送っている記録に「最後の戦いに向けて:皆さんと一緒に戦ってこられたことを本当に誇りに思います。“人事を尽くして天命を待つ”の言葉の通り、最後の結果がどうなろうとも今やれる最善の意思決定をあきらめることなく最後の一撃まで精一杯考え抜き行いましょう。」という資料がありました。連日連夜議論を尽くしてもなお自分たちが定めた目標に向かってトコトン分析し議論した仲間との日々はかけがえのないものとなり、こうして時間がたった今振り返ってみても熱い気持ちがよみがえってきます。ここで時間をともに過ごしたメンバーは私の一生の友人であり宝物です。残念ながらコロナが収束しない中、一緒にこのゲームを走っていただいた取締役会の皆さん、先生とまだ盛大な打ち上げができていないことだけが心残りとなっていますが今年こそ開催できることを楽しみにしているところです。

この授業の履修を考えている皆さん、ABSに入学を考えている皆さん、MBAでの学びを実際につなげていくためのブリッジ的な役割を持つこのマネジメントゲームを是非とも体験してみてください。

チーム写真