安藤 悠継さん(2018年度フレックスコース入学)
マネジメント・ゲームはABSの青山アクション・ラーニングでは最も歴史が古く、1990年代から始まり、2000年以降は岩井千明先生と福井一枝先生が担当されてきた経営者養成のためのプログラムである。当プログラムは、コンピューターサイエンスで世界1位、ビジネススクールでも全米有数とされるカーネギーメロン大学のMBA必修授業であり、その他世界4か国のビジネススクールが参加し競い合うものである(日本からはABSのみ)。かつて海外のMBAに興味があったことや、今後より高い経営視点を持って仕事をしていきたいと考えていた自分にとって、迷わず履修した授業であった。
当プログラムは1年時に学んだ知識のアウトプットとして、経営計画の策定、財務・マーケット・生産データの分析を通じた戦略・戦術立案、取締役会での報告や承認取り付けなどを通じて、自ら企業を経営していく形で行われる。成績評価はカーネギーメロン大学教授、担当取締役、チームメンバーによって複合的に行われる特殊なプログラムである。
履修すると半期で8単位(通常の授業の4倍)取得することもあり、想定以上にフィジカル・メンタル面においてタフな経験であった。消費財2製品を2工場で生産し、6ヶ国の市場で競合4社と争うという設定で、3年の経営期間を実際には4か月に凝縮して行うため、常に高い緊張感を維持しながら制限時間内で運営するタイムマネジメントも重要であった。各メンバーが立てた仮説のもと、全員でベクトルを合わせ、自分たちが信じた正解のない意思決定を、限られた時間内で繰り返していく。当プログラムのゴールは、自社企業の3年間のEVA(経済的付加価値)累計を最大化する事である。最終的に私たちの結果はトップと僅差の2位(ROEをはじめとする他の財務指標は全て1位)であったが、最後の一瞬まで「1位を取る」という執念を持って過ごした4か月を思い起こすと、今でも当時の高い熱量が蘇ってくる。
私はCEOとして参加したが、多様な企業文化(日・独・米・韓系企業)や異なる業種・職種からなるチームをマネジメントする役割において、その方向性や立ち位置について悩み、相談させて頂いた先生方には度々貴重なご意見を頂いた。また当プログラム経験者で、現在各界でご活躍されている取締役会の方々には、高い視座で、厳しくも愛情のあるアドバイスを沢山頂戴した。そして何より、チームメンバーから得た多くの学びは言葉に表せない。厳しい状況の中でもお互いを尊敬し、励まし合い、共通のゴールに向けて最後までやり抜いた先に見えた景色は、実際にこのプログラムを経験した者にしか分からないと思う。志を共に濃厚な4ヶ月を過ごしたメンバーには、改めて心より感謝したい。
当プログラムを履修する傍ら、勤務先での担当プロジェクトでは、今後成長が見込まれる市場に世界で初めて参入を果たし、会社の未来にとって意義ある実績として、その功績が表彰された。既存のやり方が通用しない、羅針盤のない航海のようなプロジェクトであったが、リスクを取り、戦略に整合性をもち、自ら情熱を持って市場を創っていくという姿勢で取り組めたのは、まさに当プログラムで学んだ成果であろう。今後の人生においても、自分ではどうしようもないことも多々あるだろうが、自分の運命を自分でコントロールしていけるよう、より主体的に生きていきたい。そして苦楽を共にしたチームメンバーの夢の実現や成長を心から願うと共に、自分自身もこの学びを活かし、更なるステージに挑戦していきたいと強く思う。