「文化資本を扱う「クリエイティブ・インダストリー」に従事する、またはそれを目指している方には当演習の履修を強く推奨します」
鈴木 義則さん(2015年度フルタイムコース入学)
ABSで学んできたことを総合的に捉え、実際のビジネスで活用するために、中野教授の『マネジメント演習』を履修しました。授業の実践的なアプローチはまさに目的に合うものでした。この演習では、モノやサービスの価値の評価がいかに形成されているかに焦点をあて、さらには、その市場における価値の安定化を織り成す様々なステークホルダーの関係を、ソーシャル・イノベーションの観点から考察していきます。価値評価とソーシャル・デザインが当演習のキーワードとなります。
価値評価の仕組みの考察においては、教授から提示されるワインのテイスティングや、ハイ・ファッションなどの身近なケースをもとに、各受講者が見解を分かち合います。このことからも価値評価のその多様性を体感することができますが、各受講生が現行実務の課題から選定したバラエティに富んだ研究テーマ(*¹)の発表と、それを受けた受講者全員でのディスカッションは、自身の研究にさらに多角的な視点を与えてくれます。また、ゲスト・スピーカーとしてお招きしたNPO法人クロスフィールズの三ツ井 稔恵氏の臨場感あるソーシャル・ベンチャー活動のお話しは、考察の視野を拡げてくれるものでした。
ソーシャル・イノベーションの考察においては、フィールド・ワークとして『青参道アート・フェア』に受講者全員で出向き、主催者ヘのインタビューを通じてその意図を理解し、現地を探索しました。この経験は、社会をデザインとして考えるという意味を実感させてくるものでした。また、授業の最後にケースとして取り上げていただいた建築家の大島 芳彦氏の『街のデザイン』は、価値評価とソーシャル・デザインを繋ぎ、自身の研究、延いては今後のビジネスにおいても、その道筋をつけてくれるものでした。
「価値の創造」「顧客にとっての価値」といったように、ビジネスの現場において価値というワードは日常、頻繁に用いられています。価値に焦点をあて、その評価がいかに形成されているかを探く考えることはこれまでありませんでした。このような考察を経ても、すぐに価値は見いだせる、または創ることができるほど容易なものではありません。ただし、価値評価の仕組み、その源泉やそれが形成されている各要素、安定化に至る各ステークホルダー間の関係を認識することは、モノやサービスの市場の構造を俯瞰し、ビジネスの機会を見出すことに大変有効であり、このような先端学術領域はそのための新たなアプローチとなる可能性を秘めています。そして、当授業が教授も含めインタラクティブに進行していく様は、価値評価もまた一方通行ではなく、各ステークホルダーが相互に交流し形成されているものであることを実感させてくれるものでした。
自身の不動産開発や新規事業投資のビジネスにおいて、当考察は大変有意義なものであり、即効力のあるアプローチです。すべての業種において有効なものであると思いますが、特に文化資本を扱う「クリエイティブ・インダストリー」に従事する、またはそれを目指している方には当演習の履修を強く推奨いたします。古典から、最新の研究まで、新たな学術として今まさに発展しつつある先端領域であることからも、その過程に参画できる醍醐味を是非味わっていただきたいと思います。
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