「腑に落ちない事柄をビジネスの共通言語であるファイナンスで理解する」
齋藤 慎太郎さん(銀行系ベンチャーキャピタル・投資業務担当)(2022年度イブニングコース入学)
ファイナンスの授業では「企業は誰のために存在しているのでしょうか」という問いから始まります。そして、企業の収益性を高めるために、お金をどこから調達し、どのように使うかといった財務的意思決定について考える基礎を学んでいくこととなります。
授業の中では多くのビジネスパーソンが日常的に使っている言葉や感覚、例えば「リスクとリターン」や「キャッシュ(現金)の価値」を自分の言葉で説明ができるよう求められますが、身近な具体例も提示しながら進んでいくため、徐々に身についていきます。同様に、慣れないと親しみが持てない「資本資産評価モデル」や「デリバティブ」の基礎的な理論も、授業回を重ねる毎に理解するに至ります。最終的には、簡易モデルの投資プロジェクトの評価を行える力が養われるものとなっております。
さて、冒頭の「企業は誰のために存在しているのか」という問いに対する答えを、何となく聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、その答えについて腑に落ちない方も多いかもしれません。理論と身近な事例を相互に学ぶABSのファイナンスの授業では、そのような「何となくわかっていること」を体系的に理解することで、他分野の学習および実務のビジネスにしっかりと繋げられるものとなっていると思います。
授業の中での学びで一番大きいと感じるのは、「どのような状態を儲かっていると言えるのか」を再認識できた事です。損益計算書から読み取れるデータだけでなく、「時間的価値」「資本コスト」「リスク」等の存在を理解して、企業や事業プロジェクトの収益性を考える姿勢は、ビジネスの共通言語であり、様々な実務活動に生かされるはずです。
私はベンチャーキャピタルにて、スタートアップ企業への投資業務を行なっておりますので、投資案件の可否を検討するにあたっての判断基準の支えになっております。投資の検討を行うスタートアップ企業の足元の営業利益は多くの場合マイナスであり、また未上場企業でもあるため、スコアリング的に投資判断を行うことはできません。起業家の方の掲げるビジョンやビジネスモデルに共感しつつ多面的な評価を行う中、前提となるファイナンス面での分析を行うことで、大局を見失わないよう努めております。