2021年度企業分析とファンド・マネジメント・シミュレーション体験談

担当:森田 充教授、吉野 貴晶客員教授

「理論と実践の世界をブリッジし、金融市場の起承転結を学ぶ」

小川 梓

小川 梓さん(金融機関勤務/2020年度イブニングコース入学)

なぜ履修したか

自身の金融機関の営業部門に従事してきたキャリアから、これまでアナリストにより分析されたレポートや商品設計者による資料を基に業務を行ってきましたが、自分自身でも精度の高い分析手法と運用の世界の「起承転結」を学びたく、迷わず本科目を履修いたしました。

授業で学んだこと(印象に残っていること)

森田教授からは学術的な知識を吉野客員教授からは、常にポジティブに実践的な知識を学ばせていただきました。本科目は1年を通じた唯一のカリキュラムとなっており、リアルマーケットの世界を疑似体験させてくれる仕組みが随所にちりばめられています。そこにはファイナンスやアカウンティングだけでなく総合的な経営知識全般が必要とされ、また教授陣の素晴らしいネットワークにより業界の最高峰で活躍されているゲストからリアルな話を生でお聞きすることで自分の思考の在り方について本当に多くの学びと刺激を得ることができました。特に、「好奇心がキープされている人に情報が集まり、情報の取捨選択に長けていく」運用哲学については、「頑固で良い、仮説検証を繰り返す」という言葉はこの先の私のビジネスマン人生において心に留めおきたい言葉となりました。

コロナショック後の不安定な金融市場は、過去に前例のないスピード調整や繰り返される下落局面で財務諸表の数値は過去のトレンドから大きく乖離しました。その中で行う企業分析やファンドの運用は本当に困難の連続でありました。然しながら過去のバブル崩壊やリーマンショックにおける金融危機と同様に金融市場が混乱を極める中で財務諸表を読み解き、事業内容や企業戦略・ビジネスモデル・業界特有の事情や他社比較・企業価値算出に試みたことは、格好のケーススタディであったと確信しています。

チームの運用では、銀行・建設設計・投資銀行・Law firmのバックグラウンドを持つ4人のメンバーで、マクロ環境の変化に応じた長期的な観点から本源的な価値に投資すべきとの信念のもと、単なる短期の商品作りに終始せず、ファンドを通じて「資本市場へ貢献できる」運用に挑みました。

学びとして印象的だったことは、一般的な経済理論では人は常に合理的な行動をとるという前提に立っていますが、行動ファイナンスでは人は時として非合理的な行動をとるとされており、我々もまさに講義内でその現象を数多く体験したことです。当初の許容していたリスクについて、予想に反してファンダメンタルズが悪化、リスクを抑える投資行動をとるべきところ、講義内とはいえ競争という心理が働いてしまい、バイアスを取り払うことは大変難しいものでした。

学んだ内容を今後どんな風に生かしていきたいか

財務情報は、決算が発表されれば世界中に共有されるデータであり、誰にでも分かる情報でしかありません。しかし、再現性と説得力をもって定量・定性的に分析し、さらに非財務情報にも目を向けることで、それらがいずれ財務情報に反映され企業価値を高めていくまでを仮説を立てて予測することを癖付けられるようになりました。それにより顧客であるオーナーや経営幹部の方々とよりスムーズに課題や問題解決に向けた深い対話が可能になったと考えます。また、バックグランドの異なるメンバーで幾度も議論を尽くすことは、タイムマネジメントやピープルマネジメント力も同時に鍛えることが出来、今後ますます多様化する組織の中で活かせていけるのではないかと強く確信しています。

チームメンバー

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