2019年度アドバンスト・コーポレート・コミュニケーション体験談

担当:北川 哲雄名誉教授/伊藤 晴祥准教授

「サステナビリティ経営に必要なあらゆる要素を総合的に学べる良質な授業」

河村 誠一さん(2018年度フレックスコース入学)


河村 誠一さん

なぜ履修したか

私はABSに入学した時点ですでに、青山アクションラーニングでは「アドバンスト・コーポレート・コミュニケーション(ACC)」を選択することを決めていました。北川哲雄教授の下でESGや統合報告について学ぶためにABSに入学したと言った方が良いかもしれません。

私の勤務先は海外の証券取引所に上場しており、2017年からESGの情報開示が義務化されています。私は連結決算の傍ら、アニュアルレポートの制作や機関投資家対応に携わっていたため、ESGや統合報告に関する知見を必要としていました。ACCを選択することは必然的だったのです。

授業で学んだこと

ACCの授業は毎週水曜日の6限と7限の3時間、前期と後期に分けて通年で行われました。北川哲雄先生、伊藤晴祥先生の他、研究員の林 順一先生、法政大学大学院の小方 信幸先生、そしてOBの方々がメンターとして授業に毎週のようにご参加され、ESGやSDGsに関する専門的な見地から助言をいただけるという非常に恵まれた環境でした。

年間を通じて10名を超えるゲストスピーカーによる専門的な講義やグループディスカッションを通じて先進企業の事例に触れ、グローバルビジネスにおけるサステナビリティ経営のあるべき姿を垣間見ることができたように思います。ゲストスピーカーの方々は各方面の第一線でご活躍されており、前期は日本IR協議会の佐藤淑子先生から始まり、メルカリや外資系ITソリューション企業、資産運用会社レオスキャピタル、そして楽天などからご来校いただき、広報やIR業務、財務分析、ニュース配信メディア、資産運用会社の最新動向に触れつつ、実務の基礎から本質論までを短期間で集中的に学びました。

ACC 授業の様子

後期に入り、ESGにフォーカスした専門性の高い授業内容となり、北川先生、伊藤先生、林先生、小方先生による基本講義の他、世界最大の食品会社ネスレ、世界有数のESG運用機関アムンディ、KPMGの統合報告コンサルタント部門などESGの各専門分野に精通されたゲストスピーカーの方々をお招きし、ESG情報開示制度、ESG格付け評価の動向、CSV経営の先進事例、ESG投資家の投資活動の現状、そして統合報告における課題といったESGに関わるほぼすべての分野を包括的に学びました。このようにESGやCSVを切り口としたコースワーク設計のもとで、サステナビリティ経営の本質を学ぶことができたことの幸運に感謝する次第です。

私がACCで学んだことで最も重要なこと。それはビジネスパーソンとしての「品格」です。ゲストスピーカーで来ていただいた大手外資系製薬企業サノフィ社の執行役員の方が自社のCSRに関するプレゼンテーションの中で、「職業に貴賤はない」という主旨のことを強調してお話になり、シンプルですが、私はこの言葉に感銘を受けました。サステナビリティを語る前に、人としての立ち振舞いが重要であるということを再認識しました。

ICT(情報通信技術)が高度に発達し、AI(人工知能)を活用した働き方が求められる今、企業だけでなく、私たち一人ひとりが自らの“Purpose”(存在意義)について考え、「何のために働くのか?」、「ビジネスパーソンとしてどのように立ち振舞うべきか?」を考え、行動することが求められてきているように感じます。知識の詰め込みだけではない、それよりもさらに大切なものを学ばせていただきました。

学んだ内容を今後どんな風に生かしていきたいか

ACCで学んだ内容は極めて広範囲にわたりますが、学んだ内容や資料の多くを実際の業務でそのまま活用しています。例えばニッセイアセットマネジメントの林寿和先生が取りまとめられた調査資料(全280ページ)は世界の非財務情報の開示制度や開示項目を網羅しているため、実務上の検討資料として大変役立っています。今後も様々なビジネスシーンにおいてACCで学んだ内容が生かされることが増えてくると考えています。

私は上級管理職の地位にありますので、今後のキャリアパスは上場企業の役員になることです。これからは知識の有無だけではなく、実際に企業価値を長期的に高めていくために、ステークホルダーとの対話の質を高めるマネジメント力が求められそうです。

私は統合報告を主体とした情報開示のあり方、そしてコーポレート・ガバナンスの実効性を高める取り組みに関し、ACCで学んだことを経営の意思決定の場で応用し、存分に生かしていく考えです。ESGやSDGsは、上場企業においてはまだまだ発展途上の概念であり、経営環境も日々変化しています。まだまだ学ばなくてはなりません。ACCにはOBの方々がたくさんいらっしゃいますし、勉強会も開かれています。これからも人的ネットワークを生かして最新の情報にアップデートしながら、一生学び続けていきます。

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