2018.03.30

青山ビジネススクール(ABS)・日本証券アナリスト協会・日本IR協議会共催セミナー 開催報告

2018年3月6日(火)、青山ビジネススクール(ABS)と日本証券アナリスト協会、日本IR協議会の共催セミナーが、『フェア・ディスクロージャー・ルールの資本市場への影響をどのように考えるか』というテーマで開催されました。ABS学生、企業IR関係者、アナリストから広汎な参加があり活発な議論がなされました。共催者を代表し日本証券アナリスト協会からの挨拶があり、その後3人の方の基調講演が行われました。パネルディスカッションにおいては活発な質疑応答形式により議論が行われました。

プログラム進行と概要は以下の通りです。

議 題: 『フェア・ディスクロージャー・ルールの資本市場への影響をどのように考えるか』
日 時: 2018年3月6日(火) 13:00~16:40 於:青学会館(アイビーホール)
プログラム進行: I 主催者ご挨拶
13:05~13:15 渥美恭弘 (公)日本証券アナリスト協会常務理事

II 基調講演
①13:15~13:55 『フェア・ディスクロージャ―・ルールの意義と課題』
 大崎貞和 (株)野村総合研究所未来創発センター主席研究員
②13:55~14:35 『フェア・ディスクロージャー・ルールの資本市場への影響をどのように考えるか~日本IR協議会「開示と対話のべスプラ指針」を中心に』
 佐藤淑子 (社)日本IR協議会専務理事・日本IR協議会フェア・ディスクロージャー研究会座長代理
③14:35~15:15 『フェア・ディスクロージャーとアナリスト業務
 許斐潤 日本証券アナリスト協会副会長/ディスクロージャー研究会座長・野村証券(株)金融経済研究所長
(15:15~15:30 休憩)

III パネルディスカッション
15:30~16:40 『フェア・ディスクロージャー・ルールによって資本市場の活性化をもたらせるか』
モデレーター:北川哲雄(青山学院大学教授)× 基調講演者(3名)
司会:姜理恵 光産業創成大学院大学准教授
概要

  • 最初主催者を代表し渥美氏より「企業がすべての投資家に対し公平に情報を提供すること(FD)は極めて重要であり、FDルールは資本市場活性化の好機となる。今日はFDルールのベストプラクティスに向けた「対話」の機会になれば幸いである」とご挨拶がありセミナーが開催された。
  • 基調講演の最初の大崎氏が金融審議会委員としての御経験も踏まえ「アメリカ・日本におけるFDルール導入の経緯や日本のFDルールの特徴に」ついて丁寧に説明していただいた。そのうえで「FDルールを定着させて資本市場の活性化につなげるための課題と期待感」についても言及した。
  • 続く佐藤氏は日本IR協議会が「情報開示と対話のベストプラクティスに向けての行動指針」を作成した目的や経緯を説明した。さらに4項目の基本原則について丁寧に解説し、「上場企業がFDルールを前向きに捉え、投資家と積極的に対話することの意義」を強調した。
  • 最後の許斐氏からは「FD導入によってアナリスト業務がどう変わるべきかの観点より、今後のあるべき姿として、本当の意味での専門性やロジック構築力に依拠することになる意義」を強調した。また「全市場関係者の知性が問われる契機になるのでは」という期待感にも言及した。
  • パネルディスカッションは3人の方の基調講演を踏まえ参加者より集めた「質問票」に基づき、モデレーターの北川が3名の登壇者に見解を確認する方法で進められた。
  • 大崎氏はFDルールとインサイダー取引規制の違いなどに関してご説明し、形式的ではなく実質的に運用すべきことを強調した。また企業がディスクロージャーポリシーをホームページで開示することの意義に言及した。
  • 佐藤氏は企業のIR担当者の様々な疑問に答える形でIR協議会が策定した指針の運用面で考慮すべきことや、今後のディスクロージャーのあり方について、具体的な事例と結びつけてわかりやすく説明した。さらにFDルールにおいてメディアが対象外になった経緯につき解説し、企業側のメディアへの情報発信における配慮の必要性についても言及した。
  • 許斐氏はFDルール導入後も、業績が会社当初予想からずれが生じた際の的確な情報開示を積み重ねることで市場との信頼関係が高まることに言及した。加えてアナリストの教育・啓発に取り組んでいる現状について報告し、「重厚な裏付けのあるレポート」を作成すべき意義を強調するとともに、本質的な企業評価を行なう方向に確実に変化しつつある手ごたえを表明した。