2012年フレックスコース修了 内藤 哲子
2011年2月9日。この日は、2年生進学を控えた1年生に500番台の説明会が行われた日である。その後の同期懇親会の際に、上野暁生・江黒勉・堀込玲と私の4人でチームを結成してビジネス・プランニングの履修を決めた。それぞれが様々な異なるフィールドでの経験や職歴を持ち、ダイバーシティに富み相互に補完しあえるドリームチーム、と自分たちでは固く信じたのである。ちょうど先輩方の起業家選手権での活躍を伺った直後であったため、「絶対起業家選手権で優勝しよう!」と熱く誓いを立てた。
結成したメンバーで、star artsとチーム名を命名。それからの半年間、先生方のアドバイスに基づき、ビジネス・プランニングの授業を通して事業計画を練りあげていった。4月から、NEXCO、JBCC(ファイナリスト進出)、京大「テクノ愛」、MIT、キャンパスベンチャーグランプリと様々なコンテストに応募。最後が、我々にとって本命の、この「学生起業家選手権」であった。
学生起業家選手権とは、東京都ならびに東京中小企業振興公社が主催するコンテストで、起業を目指す学生にとっての登竜門として広く知られている。今回は記念すべき10回目となり、エントリー数は過去最多の268件。これらの中から、第一次から第三次までの選考を経て、10チームが決勝大会へと進出することになった。ファイナリストのうち、ABSのビジネス・プランニングからは計2チームが出場することとなった。賞金は優秀賞に50万円、奨励賞に10万円で、さらに優秀賞受賞者には、一定の条件下で別途100万円の創業資金の支援も行われる。
今回、我々がエントリーしたプラン名は“物を贈らず気持ちを贈る”ワンコイン・ソーシャルギフトサービス「絆プラス」である。ちょっとしたお礼をする際などにスモールギフトを贈ることがあるが、無難なものを贈ることが多く、相手の好みに合うものをプレゼントできずに使われず無駄になることもある。さらに、忙しい生活の中では、簡単にプレゼントやメッセージを送り感謝の気持ちを伝えることも難しい。そこで、我々はソーシャルメディアを介したギフトサービスに着目し、簡単に贈れて、物が無駄にならずに社会に役立ち、関係を更に深めることができるサービスを提案したいと考えた。
第一次審査へのエントリーは10月末。いろいろな授業の課題と闘いつつ、平日および土曜の深夜まで集まりコンテストの準備を進めた。その後の第二次審査を経て30チームに選ばれ、ついにセミファイナルへと進めることになった。セミファイナルの事前セミナーに参加した際には、他の出場者の若さに圧倒され、どうみても大人な社会人大学院生は浮いていたが、年末も正月も返上しプランを凝縮させ、試験期間の1月に行われたセミファイナルでは、5人の審査員を目の前にして10分間のプレゼン&質疑応答を行った。
そして、決勝大会の2012年2月5日。卒業を控え、テストやレポートが終わり安堵する同級生を横目に見つつ、毎日のようにプレゼン練習を重ねて本番当日を迎えた。ABSからは、先生方をはじめとして同級生、ビジネス・プランニングのOB・OG、そして来年度履修予定の一年生が応援に駆けつけてくれてとても頼もしかった。緊張しながらも都庁ホールの壇上に立ち、6分という短い時間の中でプレゼンを行ったが、質疑応答までが驚くほどあっと言う間に終わってしまった。反省点はあったものの、チーム全体で時間をかけて力を合わせた努力の成果は出しきることができたと感じる。
結果として、ABSの2チームは、優秀賞は逃したものの、奨励賞を受賞した。
この学生起業家選手権を通じて、得たものは3つある。まずひとつは、このコンテストへの応募でABSでの学び(インプット)をアウトプットする機会を得たこと。ファイナンス、マーケティング、戦略などあらゆる知識を総合的に集約し、アイデアから始まったものをプランとして協働で練り上げ完成させるという経験が非常に勉強になった。チームの結束も堅固となり、学生生活の一番の思い出となる科目がこのビジネス・プランニングであったと言える。
次に、自分たちの立案したプランを多くの人に見ていただき評価やコメントを頂く機会を得られたことである。オーディエンス賞の投票用紙に、ABS関係だけでなく見知らぬ方からの応援コメントをたくさん頂いたのが励みになったり、当日観戦されていたベンチャーサポートの方に有用なアドバイスをいただいたり、という経験をすることができた。
最後に、この学生起業家選手権に出場したことで、このプランを実現したいという気持ちがよりいっそう強くなった。このサービスを形にし、グローバルに発信していきたいという強い思いを与えてくれたのが、このコンテストである。これをきっかけに、卒業後、メンバーの一人がstar arts株式会社を設立し、我々の夢をサービスの実現に向けて引き継いでくれることになった。ABSを卒業した今、これからはリアル・ビジネスプランニングとして学びのフェーズから実行のフェーズへと進み、今夏のサービスインおよび展開を楽しみにしている。
このコンテストに際して、前田昇教授、長谷川博和教授、ビジネス・プランニングのOBやABS在学生にいろいろアドバイスやご協力をいただいたことに感謝の気持でいっぱいであり、この場を借りて改めてお礼の思いをお伝えしたい。
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