2015年度マネジメント・ゲーム体験記、および2016年度取締役を務めて

チャレンジしてこそ、グローバルビジネスの神髄を体現できる

瀬川 幸宏さん(IT系企業 マレーシア・オフショアセンタ長)

私は2015年度、CEOとしてゲームに参加した。そしてABSを卒業後、2016年度は取締役としてゲームに参加させていただいた。つまり、経営を執行する立場と、監視する立場の両面でゲームに取り組み、その中でグローバルビジネスを成功させるために必要なことは何かを学んだ。

1.CEOとして

ライバルは米国、ウクライナ、マレーシアなど海外のMBAチーム。暮らしている文化も価値観も違う人たちと競合するのは、リアルのグローバルビジネスと同様である。マネジメント・ゲームは、全体で30チームほどが、5チームごとの「ワールド」に分かれて、腕時計の製造販売をグローバル市場で行う想定で、3年間で高めた企業価値で順位が決まるゲームである。
2015年度の私たちのチームは、ABSで学んだ統計分析、財務分析、競争戦略、ゲーム理論などを駆使して、参加した30チーム中2位(「ワールド」内でも2位)との好成績を収めた。その中で、グローバルビジネスを成功させるには、①意思決定プロセス、②ステークホルダーとのコミュニケーション、③チームワーク、が重要であることを改めて認識した。

①意思決定プロセス

マネジメント・ゲームにおいて好成績を収めるには、経営に関する意思決定を短期間に実施していくことが必要である。これは、各自が実際の仕事、他の科目履修をしながらのことなので、効率的に行わないと途中で破綻してしまう。
私たちは、まず過去データの分析をベースに、チームとしてぶれない基本戦略を策定した。次に四半期ごと(実際には3~4日ごと)に設定する販売価格、R&D費用などの数値決定においては、意思決定支援ツールと、その結果に基づく合理的な合意形成プロセスをチーム内で構築した結果、想定外のことが発生しても、比較的スムーズに正しい判断ができるようになった。

②ステークホルダーとのコミュニケーション

実際のビジネスで活躍されている方々を中心とした5名の取締役と、有効なコミュニケーションをとることも重要である。ゲームにおいて事業を進めるには、四半期ごとに経営状況を報告し、1年ごと(実際には3週間ごと)に開催する取締役会にて事業計画の承認を得る必要がある。
私たちは、基本戦略の一貫性を保ち、四半期ごとの詳しい経営状況の迅速な提供と、質疑へのクイックレスポンスを行うことにより、共通目標に向けた具体的なアクションについて、取締役の方々からスピーディーに承認を得ることができた。

③チームワーク

ゲームで好成績を収めるには、チャレンジできるチームビルディングが重要である。目まぐるしく変化する競争環境の中で、新たな戦術を実践するには、チーム内に同調する人が必要であり、また行き過ぎた行動を止める人が必要である。また、チームの潤滑油となる人がいないと、チーム全体がギクシャクする。
私は当初メンバー集めに苦労したが、結果的に4名のバランスのよいメンバーでチームを構成することができ、それが好成績につながったと思う。苦楽を共にしたチームメンバーとは、将来に渡ってよい信頼関係が作れたと実感している。


2.取締役として

現役の学生だった2015年度は好成績ではあったが、「ワールド」内で2位であったことの悔しさが多少残る結果であった。MBA課程修了後の2016年度は取締役の一員として、学生チームと、他の経験豊富な取締役の方々との間の橋渡し役を担わせていただいた。立場が変わり、直接的な意思決定に関与できない歯がゆさを感じつつも、前年度の実績と反省に基づき、学生チームに対して具体的なアドバイスを行った。
メンバーが3名と少なく、各自にかかる負担の大きさも考慮して、取締役の間では厳しい要求は控える空気があった。その中で、学生チームの頑張りにより、「ワールド」内1位の結果となったことは取締役としても喜ばしい限りである。
しかし、本当の喜びは、経営執行チームとして、チーム一丸となり目標に向かってチャレンジすることであり、その意味では、マネジメント・ゲームに参加して、リアルに近い状況でグローバルビジネスを体現することがABS学生の方々にとって価値の高いことだと思う。努力と試行錯誤をしながら工夫をして得たものこそ、本当の価値だと思う。ぜひ、マネジメント・ゲームにチャレンジして、そこで得たものをリアルのビジネスに活かしてもらいたい。