マーケティング演習(I)[専門科目(300番台)]

担当:宮副 謙司教授

2013年フレックスコース入学 佐山 裕子

2014年度「マーケティング演習(Ⅰ)」のテーマは「フィールドリサーチによるライフスタイル研究」だった。本授業は講義によるフィールドリサーチ手法等の知識の習得と、フィールドワーク実習という体系的な構成になっており、大変充実した内容だったと思う。

授業の前半は講義が中心に行われた。ミニレポート作成(全4回)、輪読、ゲストスピーチと様々なアプローチからフィールドリサーチの手法の習得、理解を深めた。以下、簡単に内容と感想をまとめる。

ミニレポート作成は、新聞からマーケティングに関する記事を選び、記事の要約、着眼点、所感をまとめ提出するものだった。これは世の中の動きや日常の中から気づきを養う力と、レポーティングに必要な要約力を身につける事を目的としている。個人的には、この2点を意識してまとめるのは意外と難しく苦労したが、結果としてその分力がついたと感じている。日常いかにそのような観点を意識していないかに気づかされた。

輪読では、三浦展(著)『第四の消費』を対象文献として取り上げ、時代と共に変化する消費の価値観について学んだ。輪読を通して「消費とは何か」について考えた事は消費現場をリサーチするにあたって参考になり、活かされたと思う。また受講生の年代層が20~50代と幅が広く、消費に対する価値観の違いについてディスカッションできた事も貴重な体験であった。

ゲストスピーチでは、株式会社パルコ「アクロス」編集長の高野公三子氏にお越し頂き、定点観測(ストリートファッション・マーケティング)の方法論についてご講義頂いた。今和次郎の「考現学」の学術的な内容から、リサーチのステップ、実査における注意点など具体的で実務的な内容までお話頂き、大変勉強になった。
講義内では毎回、受講生が各自の気づきを発言し、ディスカッションできたので、そうしたことも大変有意義だった。

授業後半では講義を踏まえ、青山・表参道地区のフィールドリサーチ実習を3回実施した。
1回目は食品メーカーのマーケティング戦略の実際の商品展開を検証するためにコンビニエンスストアをリサーチ。2回目はカフェ4店舗、3回目はチームを組み自由にテーマを決めて行った(3チームに分かれ、各テーマはオーガニック、カフェ、本屋についてだった)。実習の前に各自チェックシートを作成し、企業のマーケティング戦略について分析、仮説を立てリサーチに臨んだ。リサーチ後は各自で戦略の整合性や気づいた事をチェックシートにまとめ、「ダウンロード会」という共有の機会を設けて受講生間でシェアを行った。

実習で特に印象に残っているのは、ある企業のアンテナ型カフェのリサーチだ。事前の仮説としては、その企業の製品特性から男性がターゲットであろうと皆の仮説は一致していたが(企業の広報資料にもそう書いてあった)、実際現場へ行くと顧客層は女性ばかりで驚いた。現場へ行ってみなければ分からない事、行ってみて初めて気がつく事があると実感し、現場に足を運ぶ事の重要性を感じた。実習全体を通しての反省点は、仮説に沿って自分の都合の良い情報を収集し、都合の良いように解釈してしまう事だ。それでは新たな気づきは得られない。今後の課題は日頃からフラットな視点で事実を収集するよう意識する事と、基準となる知見を増やす事だ。そしてその気づきを、ビジネスにつなげる戦略発想、構想力としマーケティング戦略策定、提案にする力にしたい。

本授業で学んだフィールドリサーチのフレームワークと、新たな気づきや発見を得る力は、今後の実務において糧になると確信している。