CRM戦略[専門科目(300番台)]

担当:坂本 雅志非常勤講師

2013年フレックスコース入学 望月 深希

本科目は、マーケティング専門科目として配置されている。しかし、CRM戦略は、マーケティング担当者だけに必要な知識ではない。私が履修した2013年度後期は、履修者がABS以外の他学科院生や卒業生の科目履修者も含め50人を超える大人数であったことからも、CRM戦略がマーケティング担当者だけに限られたものではなく、すべてのビジネスパーソンに共通して学ぶべき必要な知識として捉えられている傾向がうかがえる。そして同時に、履修者の多さから企業においてCRMへの取組みが重視されていることがわかる。

本授業におけるCRM(Customer Relationship Management)の定義は、「顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益の双方を高める為の経営における選択と集中の仕組み」である。

CRMの全体像は、大きく分けて二つの柱からなる。まず一つ目は、どのような顧客を自社の経営戦略に合致する優良顧客とするのか(顧客の識別)。二つ目は、その維持・育成・獲得を通じて顧客満足と企業収益の向上を実現する仕組みをどのように構築するのか(顧客リレーションの構築)。どちらが欠けてもCRM戦略は成り立たない。その為には、優れたCRM戦略を構築する組織マネジメントも必要となる。

企業において収益向上は必要不可欠な経営課題である。収益を最大化するために、限られた経営資源を如何に最適に配分するかが鍵となる。つまりCRM戦略はマーケティング戦略に留まらず、企業全体の業務遂行の仕組みと仕方に関するフレームワークとしても捉えることができる。

本授業は、 ABSの修了生であり、在学中にCRMコンサル会社を起業された坂本先生が教鞭を執られる。ほんの数年前まで自分たちと同じ学生側であった先輩が起業し経営者となり大学院の講師として教鞭を執られる姿には、ただそれだけでも後輩として刺激を受けずにはいられない。坂本先生のエネルギーに満ちあふれた熱い語り口は、ABS一番のように感じる。50人を超える履修生に全く引けを取らない先生の熱意あふれる授業は90分間、学生を飽きさせることがない。

授業は、クラスディスカッションの時間が多く取り入られるため、学生の積極的な参加が求められる。ディスカッションを通じ、それぞれの学生が所属する様々な業種・企業のCRMへの取組み状況を知ることも可能になる。異業種・他社の事例が、自社にそのままあてはまらない部分もあるが、本質的な考え方は個客を把握できるビジネスには共通的に適用できるものである。

授業では、CRMに取組む際の考え方、フレームワーク、理論や分析手法を丁寧に学ぶことができる。ケースとして扱う事例も金融、ホテル、化粧品からBtoBまで多岐に及ぶ。またゲストスピーカーを招いての授業内講演では、最新事例にも触れることになる。CRM を適用する上でのフレームワーク検討手順、その実践の一部について関連事項を網羅的、体系的に学ぶことができるのである。

本科目を受講することにより、CRMの定義についての基本的な理解を確実にすることができる。さらに様々な業界や企業のCRM関連問題を分析することを通じ、授業で学んだ理論・視点で自社のCRM戦略について分析・評価することは、自社に対する新たな気づきを与えてくれることになるかもしれない。そして、今後の戦略・改善施策など、自社にとってのあるべき姿、方向性を導入できる能力の礎を獲得できる授業であったように思う。