経営戦略基礎[必修科目(100番台)]

担当:澤田 直宏教授

「講義とケースに基づくディスカッションを通じ、事業責任者としての基礎固めを行うプログラム」
池尻 圭井子さん(エーザイ株式会社)(2016年度フレックスコース入学)


授業で学んだこと

「経営戦略基礎」では、事業戦略の分野の基礎について学びました。今日私たちは、誤った戦略により取り返しのつかないことになっている多くの企業を目にしています。一方で、厳しい業界環境にも関わらず高い利益率を上げている企業や、他社からの模倣を困難にしているエクセレントカンパニーも多く存在します。両者の運命を分ける要因として企業の戦略に注目が集まっていますが、その理解・定義は人によって様々で、そもそも「戦略とは何か」を皆で考えることからこの授業はスタートします。

授業のなかで澤田先生は、経営戦略の定義を「企業が実現したいと考える目標を達成するため、外部環境および経営資源を関連付けて描いた、将来にわたって一貫性のある行動方針」としています。私のような企業人、もしくは会社経営を行う者にとって、「企業の戦略とは何か・どのようにあるべきか」を理解することは、自らの勤務先に対する分析や新事業を考案する際に欠かせない要素であると考えます。

「経営戦略基礎」の授業では、受講者が事業責任者の立場で事業戦略を実際に評価・策定できるようになるための、多くの工夫・仕掛けがありました。実際の授業は、講義・企業事例のケースレポート・グループワーク・クラス全体でのディスカッションという流れを繰り返しながら進んでいきます。この繰り返しを通じて、環境分析のFive Forces Modelや、業務活動を機能別に示したValue chain分析、持続的競争優位をもたらす経営資源を分析するVRIN frame work、戦略立案者としてのBusiness Modelの設計方法など、多くの知識・フレームワークを、実際に手を動かしながら習得することができました。

そして何より、この授業を受講して得られる最大の収穫は、そのような知識・フレームワークを自分の頭のなかで整理し、ケースに合わせて柔軟に活用することができるようになったことです。これを可能にする習得プロセスこそが、「経営戦略基礎」の授業の真髄であったと思います。澤田先生の講義を聞き、予習レポートに頭を悩ませ、級友たちと議論を交わすことで戦略の基礎の土台が身に付くよう、授業・習得プロセスが巧みに設計されていたのです。

特に、この習得プロセスにおいてKeyとなったのは、個人に課せられた予習レポートにおいて、事前に澤田先生から提示された問いにあったと思います。この問いに対し、自ら考えに考え抜くことで、授業で学んだことがより深いレベルで自身に浸透していったと実感できました。私の印象に残る具体的な設問の例をいくつか例に挙げると「低い産業魅力度の業界で、短期間のうちに優良企業を育て上げた経営陣から、戦略立案について学べる点はなにか」「ある企業の実行プロセスをビジネスモデルにおけるコスト構造から検討せよ」といったものです。この毎回の予習レポートを提出したあと、澤田先生から各自へフィードバックが行われるため、受講者のモチベーション向上にも繋がりました。

また、授業内では、日常業務では交わらない業種・職種の級友たちとのグループワーク、全員参加でのディスカッションが行われます。まさに授業で取り上げられている企業と同業種の級友もおり、澤田先生は積極的に彼らの生の情報を取り入れるため、全員がその業界に携わっているような臨場感が生まれ、より議論が白熱した場面も多くありました。

「戦略」という言葉は、それを使うだけで様々な事象を説明できた気になってしまうという側面を持ち合わせていると思います。私自身も以前はぼんやりとした理解のまま曖昧な使い方をしてしまっていましたが、この授業を通じ、自分のなかで「戦略」をはっきりと定義づけることができるようになりました。

実際の仕事でどのように生かしているか

実際、この「経営戦略基礎」を学び、自らが所属する会社に対する捉え方が以前と全く異なるものになりました。これまでは、自社の業界をほかの業界から見つめ直したり、自社のとっている戦略を見直したりする機会は殆どありませんでした。しかしながら、この授業を受講した今では、私の属する医薬品業界が、どのような特徴がある業界なのか、さらに自社のとる戦略を意識しながら、現場の施策に取り組むことができるようになったと実感しています。私が企業人として成長するために、本来は事業部長の立場でなければ知ることが出来ない視点を今の段階で得られたことが、「経営戦略基礎」を受講したなかでの大きな意義であったと考えています。

(2017年4月掲載)