BACCSの一年を完走して

企業分析作業を通して得られる知識は幅広く、懸命に走ったマラソン後のような達成感や満足感を深く得られる

豊田 剛平さん(2013年フレックスコース入学)

BACCSのススメ

「ビジネススクールに通って何を勉強したと言えるか?」入学後1年が経過した頃に開催された、体験的学習プロジェクト説明会でのBACCS内容説明の時に、この問いを聞いたことを覚えている。私はこのフレーズに打たれてBACCSを受講したと言っても過言では無い。そして終了した今感じるのは、本当にBACCSで企業分析に打ち込んで良かったという気持ちだ。BACCSは自身に妥協しなければ、企業分析作業を通して得られる知識は幅広く増えるし、且つ懸命に走ったマラソン後のような達成感や満足感を深く得られる科目となる可能性は高いと私は思う。そして、私の場合は授業を通して株式投資への興味が生まれ、そして投資手法についても学べる実用性も備えた科目となり、その点も楽しめた。

BACCSでの学び

企業分析に係る作業
① 分析先の業界及び企業の資料を漁り有価証券報告書やIR資料を読み込む
② 業界定性分析及び企業分析(定性情報、業績情報)を実施
③ 業績ドライバーを導き出す
④ 将来の業績ストーリーを分析結果に基づいて作る
⑤ ④を貸借対照表、損益計算書の予測に落とし込む
⑥ 10年間の企業業績予測データシート(BS/PL/CS)を完成させる
⑦ プレゼンテーション資料及びアナリストレポートを完成させる

①~⑦の作業を2014年度は分析業界、企業を変えて3回行った。前期は企業分析に関するノウハウが少ないためBACCS受講生全員がコンビニ業界の3社の内いずれか1社を分析し、私はミニストップを担当。
次に夏季休講中にはチームを編成、チーム独自で選定した業界から各自1社を選択し、各社の10年間企業業績予測データシート、チームで纏めたプレゼンテーション資料及びアナリストレポートを提出。私のチームは航空業界を選択し、私はスカイマークを分析した。企業選定結果を講師に表明した翌日に同社の業績悪化報道が成され、業績予測のストーリー構築に苦労したものである。
最後は、後期に最終課題として各自が独自の業界を選定する。私は住宅業界を選択し、積水ハウス、住友林業、パナホームの業績予測を行った。1社でも相当苦労するが、3社を独力で分析することは膨大な作業となることは間違いない。

さて、①〜③についての作業を解説する。これはマーケティングの外部環境分析と同じだが、講師から業績予想を目的とした分析のポイントが適切に授業で解説されるため、そのポイントを押さえながら作業すれば良い。私はこの作業に多くの時間費やした。情報収集に使用するのは、新聞・雑誌記事、IR情報、官公庁・公的機関などが公開する情報等である。ここでの作業を怠らず網羅的に緻密に情報収集を行い、それらを纏めた後に自分のストーリーに転化していくという一連の作業はBACCSの面白みであろうし、業績予測とアナリストレポートの内容に奥深さを与えるものと言える。
次に④〜⑥についての作業である。分析結果から作ったストーリーに基づき、Excelでの貸借対照表、損益計算書の予測を行い、キャッシュフロー計算書の作成までをここで行うが、これが非常に苦戦する。BS/PLの各項目全ての予測数字が適切に組まれない限り、貸借対照表上の資産の部と負債+純資産の部の数字がバランスしない(つまり差引した場合に差異が出る)為である。これをバランスさせるための作業過程で、貸借対照表の作り方を学ぶことが出来るため前向きに捉えると有意義な時間なのだが、これに数十時間取り組むため非常に疲労感を伴う苦行である(しかしバランスした時の喜びは極上だ。またバランスさせるための所要時間は個人差がある。)。この作業を通して、有価証券報告書や財務三表を深く読み込むことに慣れ、数字の羅列がストーリーとして繋がるようになるだろう。複数年に渡り注意深く見ると、様々な情報が読み取れ、自分独自の分析や予測が出来ると思う。
最後に⑦について説明する。最後は業績予測の説明用プレゼンテーションシートとアナリストレポートを作成する。この過程で改めて予測への矛盾や不備が確認された場合はExcelに戻ることもあるが、それらが無事進めばプレゼン完成、それをレポートとして文章化し、提出となる。成果物の提出後は必ずプレゼンテーションの時間が用意される。これが一種の見せ場であり、講師からもアナリストとしてのプレゼンテクニックについて指導が成される。最終課題の中間提出後(12月初頭)のプレゼンテーションでは、発表35分、討論5分、質疑応答15分が持ち時間だが、それは全て録画され、後日各自に配布される。それを見て自己評価を行い、その結果を提出する。録画を見るという苦行はこの歳(37歳)になっての辱めとなるが、自分のプレゼンの癖を改善する良い機会となるであろう。

最終課題については、講師から各自に書面によるフィードバックが1月初旬に行われ、それを最後に各提出物に反映させて1月末に最終課題の本提出となる。しかし、このフィードバックが非常に大変な代物であった。講師には感謝の念を通り越した思いを抱いたが、きっとそれは恐らく私以外の受講生も同様であったろう。今までの作業が何だったのかという程打ちのめされる感覚で私の場合は訂正・追加作業が発生し、最後はそれに負けまいと必死に取り組み、何とかやり遂げたことを思い出す。

BACCSは面白い

基本的に授業は面白い。その講義内容がアカウンティングからマーケティングやプレゼンテーション技術、そして株式投資心理など多岐に渡ることも理由であるが、授業の際に聞ける様々なエピソードも楽しい。この授業内容が濃いというのもBACCSの魅力であろう。
また、大学院を通して成果物として何かを残したいという方には、アナリストレポートは最適である。作業に没頭し疲れ果て真っ白になる程だったが、その分絞り出された成果物を提出した後は、大学院生活で最も充実感を得ることが出来たと確信している。知の総合格闘技と先生は仰っているが正にその通り、頭も体もクタクタになる事は間違いなく、もう一度やりたいかと言われると拒否してしまいそうだが、それでもなお私は体験的学習プロジェクトを取るならば、BACCSを受講することをお勧めしたい。