BACCSを履修して

膨大な情報を適切に分析し、俯瞰的な視点や整合性の高い分析・検証に基づいて冷静に判断する能力は、実際のビジネスでも活用できます

村山 由佳さん(2013年フレックスコース修了)

1.カリキュラム概要と得られるもの

体験的学習プロジェクト「Business Analysis and Corporate Communication system(BACCS)」では、選択した業界の上場企業3社に関してバイサイドアナリストの立場でアナリストレポートを作成し、プレゼンテーションすることを最終成果物とします。(個人ワークです)

アナリストレポートはアナリスト自身の投資判断を投資家に説得力を持って説明し、投資家自身の投資判断を促すことを目的としています。
従ってアナリストレポートの良し悪しは、投資家の立場から見て説得力があるか否か、投資家が株を売買する気になったか否かが重要となり、この点はBACCSで私達が作成するアナリストレポートも同様です。
講義では、アナリストレポートを作成する一連のフローを学ぶ中で、企業分析に不可欠な会計知識はもちろん、業界・企業分析の考え方等を広範囲にわたって学んでいきます。

また膨大な情報を適切に分析したり、俯瞰的な視点や整合性の高い分析・検証に基づいて冷静に判断したりする訓練により培われる能力は、実際のビジネスの場においても有効に活用できるものと思います。

2. 講義と課題について
<前期講義で重点が置かれていた点>

・業績予想に必要な会計知識の習得
・業界・企業分析の基本的な考え方の理解
・指定された企業の業績予想とレポートの作成

<後期講義で重点が置かれていた点>

・良いアナリストレポートを作成するために、前期で学習、訓練により習得した知識等を更に広め、深める。

会計についてはほぼ毎週課題(減価償却費、のれん、減損、キャッシュフロー計算書等)が課され、翌週の講義で解説される形式でした。
会計以外の講義はBACCSが「知の総合格闘技」と言われるに相応しく、ファイナンスや統計はもちろんのこと1年次の基礎科目のほとんどが関係しているだけでなく、更に広範囲にわたる教養、常識、経験が必要とされることが講義回数を重ねるにつれて実感させられる内容でした。

前期の課題で株式会社ファーストリテイリングの企業分析と10年間の業績予想レポートを作成した際には、履修者全員が同一企業を分析しているにも関わらず、全く異なる見解に分かれた事は非常に興味深いものでした。
また夏休みにはグループワーク(4名)で、選択した業界の3社のアナリストレポート作成に取り組み、後期講義でプレゼンテーションしました。

夏休みの課題を含めてとにかく多くの課題が課されますが、課題に取り組むことによって確実に実力がついていくことが感じられました。

後期講義は講義内容が更に拡大していきましたが、講義と並行して個人のアナリストレポート作成を進めていましたので、毎週の講義で新たに学んだ事を分析に取り入れたり、追加の情報を分析したり、再度分析し直したりの繰り返しでした。
12月上旬にアナリストレポートとプレゼンテーションのPPTを提出した後は、25分間のプレゼンテーションです。プレゼンテーション後の講師陣、履修生からの質疑応答は最も緊張した場面でした。
翌日には講師からのフィードバックがメールで届き、程無くして履修者全員からの評価(10点満点)とフィードバックが届きます。それらのフィードバックを踏まえて、その後約1ケ月かけてアナリストレポートの完成度をあげていきます。

3. BACCSを履修して

私は会計課題がほぼ全滅状態でしたし、キャッシュフロー計算書の作成にも苦心しました。資格試験レベル(簿記2級)の知識は全く役に立たないことを思い知らされ大変苦労しましたが、講師に個別指導して頂いたり、他の履修者と勉強会をしたり、最終的には夏休みに復習してようやく理解できました。もちろん真面目に授業を受けていれば通常は問題ないはずですが、万が一遅れをとった場合でも夏休みには挽回できますのでご安心ください。

個人ワークでは学習塾業界を選択しました。財務3表(P/L、B/S、C/F)の分析と、企業のビジネスモデル、競争優位性、業績変動要因、業界分析、マクロ分析等の定性的な分析を一人で行うことは想像以上に大変な作業でしたし、課題に取り組んでいる間に日々発生する新たなニュースも必要と判断すれば分析対象にしましたのでレポートを書き終えるまで何らかの分析をし続けていたように思います。
なお私がアナリストレポート作成中に常に意識していた事は、「分析は網羅的か?」「長期予想は複数の視点から検証して整合性が高いか?」、そして「自分はニュートラルか?間違っていないか?」と自問自答することです。
無限にある情報から重要な情報を判別・分析したり、種々の分析結果を総合的に考えたり、自分なりのストーリーを作ったりという一連の作業には創造的な部分も多分にあり、大変さと楽しさの両方を感じられ、1月中旬にアナリストレポートを提出した時の充実感は相当なものでした。

BACCSは私達が4期目でしたが、毎年講義内容が洗練されていっているようです。是非皆さんにもBACCSで刺激的な1年を過ごしていただきたいと思っております。