アナリストの疑似体験

普段は企業の内側としての立場が多い中で、外からの視点は新鮮。

宮川 秀昭さん(2014年フレックスコース入学)

毎年内容は少しずつ進化しているようですが、おおまかにはアナリストレポート作成のあと、日本株アクティブ運用の疑似体験という流れできているようです。個人での作業とチームでの活動があり、講義やプレゼンテーションを通じて、証券アナリストと、それからファンドマネージャーの立場で、企業を外から見ていきました。

もっとも最初は、アナリストとは何をする人なのか、どこから手を付ければよいのか、といったところからでしたから、とにもかくにもまずは会計知識の基礎的な復習。理解度テストを繰り返して、できるようになるまでやる、という徹底指導が最初の関門でした。

アナリストとしての素養は講義でインプットします。これが意外に幅広く、慣れない見方や考え方に苦戦します。財務諸表を読み解き、事業内容や企業戦略、ビジネスモデルに踏み込み、業界特有の事情を勘案、競合他社との比較、トップの人となりはどうなのか、などなど。あくまで公開されている情報をもとに分析していきますし、ましてそれほど知名度の高くない企業ならできることは限られてくるのではとも思っていましたが、それでも結構いろいろなことがわかるのだと日々新しい発見の連続です。

前半の分析対象企業は抽選で決まり、お菓子メーカーの担当となりました。分析をもとに10年間の業績予想をしていきます。いきなり最終版を提出するのではなく、3回に分けて少しずつ業績変動要因を特定していきました。保守的な予想ではなく、将来の変化に対応できるよう、予想が外れる可能性について検討しておくこともポイントの一つ。プレゼンテーションでは、発表者が互いに評価し、良いところ、悪いところを指摘しあいます。

後半はチーム戦で、ポートフォリオ組成を通じて、企業価値評価の方法とリスク分析の考え方などに取り組みました。最初は練習から。20社だけのポートフォリオを組んでみて、だいたいの感触をつかみます。ファイナンス理論や統計手法の復習のあとは、銘柄選定の方法、たとえば、企業評価のためのさまざまなモデル、投資指標をどのように使うか、プロセスに再現性はあるか、リターンの要因分解、コントロールの対象をはっきりさせること、などなど。作り方に唯一の正解はないので、チームの方針に説得力があるかということがとても重要になってきます。

チーム初期の活動として、ファンドの運用方針と名前決めがあるのですが、これが案外盛り上がりました。選ばれるファンドになるためにどんな価値が提供できるかという視点では、マーケティングの要素もあるのです。良い投資対象を選ぶという意味では評価者でありながら、同時に評価される側として、自分たちに投資してくださる方々に任せて良かったと思っていただける必要もあるということです。チームとしてできることのすり合わせのあと、5年あるいは10年単位の長期視点で割安株投資、と方針は決まりましたが、どういう言葉を使うか、デザインにもこだわり、日本人の国民性に訴えるプレゼンテーションに仕上げました。

月1回の発表では、専門家の評価を受け、そのつど運用を見直します。3回目の発表で大きな転機を迎えました。最大98銘柄あったポートフォリオを、わずか30銘柄に減らし、リスク要因重視から個別銘柄重視に方針転換することにしたのです。数が違うとリスク分散の度合いが変わり、運用プロセスを質的に変えなければいけません。このころチーム内でさまざまなハプニングがありました。履修中に海外赴任が決定し、アフリカからリモートで議論に参加してもらったり、親知らずを抜いたら麻痺が出てしまって作業どころではなくなってしまったり。勘違いで、まったく違った銘柄を入れていたことがあとから判明。運用実績の計算がまちがっていたのに、そのまま発表していたとか。それぞれに仕事なり他の勉強なりを抱えながらの作業ですので、時間との戦いです。

情報を取捨選択しながら、日々数字と向き合うシミュレーションは、ある意味現実的なバランス感覚や割り切りも必要。お金儲けの要素はあるにはありますが、必勝法のようなものではなく、むしろ普段は企業の内側としての立場が多い中で、外からの視点は新鮮でした。自分で直接的に経験できることは限られています。一見とっつきにくそうに思える企業評価やポートフォリオマネジメントも、疑似体験なら効率がよくリスクも低い。きっとその中に求めている何かがあるに違いありません。