2016年度アドバンスト・コーポレート・コミュニケーション体験談

担当:北川 哲雄教授/佐藤 淑子非常勤講師

「ACCで学んだ土台があれば、変化を恐れることなく、対応力を高めることができるのではないかと、自信につながっています」

久野 浩子さん(2015年度フレックスコース入学)


なぜ履修したか

体験的学習プロジェクト科目(500番台科目)はABSの最大の特徴であり、学生生活のハイライトであると考えていました。そこで、入学時オリエンテーションから、「500番台は何を履修しようか」ということが、自分自身、そしてクラスメートたちの大きな関心事となっていました。実際に授業が始まり、必修をはじめとする履修科目に取り組んでいるうちに、これまで学んだことのない分野のおもしろさに目覚め、いろいろ関心が広がっていきました。そこで、1年後期も半ばを過ぎ、500番台選択を目前にして、自分の仕事により近い科目で専門性をより高める方がいいのか、それとも反対にこれまでの仕事とあまり関係ない科目で視野を広げるのがいいのか、などとあれこれ迷い、悩みました。

そのようななか、2016年度には、それまでのBACCSからの発展的な変更により、アドバンスト・コーポレート・コミュニケーション(ACC)が新設されることになりました。前例がないだけに、どんな内容になるのか期待しながら説明を受けた時、「これは自分が仕事を通して、もやもやしながらずっと考えてきた問題意識に合致するものだ」と気づき、ACCの履修を決めました。加えて、企業の抱える問題がいろいろと取り沙汰される機会が増えており、今後は資本市場との関係やコーポレートコミュニケーションという機能がますます重要になるだろうと感じていたことも、選択のひとつの理由となりました。

授業で学んだこと

ACCは通年での履修となっており、当初は長丁場だと思っていましたが、気がつけば、あっという間に30回目の授業が終わりました。そのなかでいくつかの大きなヤマ場がありました。一つめは個人で取り組んだ企業レポートの作成、2つめはESGを中心とした企業分析のグループ発表、そして、最後がクラスを2つのグループに分けて行った「住友金属鉱山」「塩野義製薬」の模擬アナリスト説明会でした。特に、最終のグループ発表には、両社のIR担当部署の方がお越しくださり、ご講評をいただきました。企業の方の前でプレゼンテーションや質疑応答をするのは本当に緊張しましたが、このような機会があることも500番台科目ならではの醍醐味だと思います。そして、最初の講義から企業レポート作成、グループワークでの企業分析等、段階を踏んでいき、ヤマ場を越えるごとに総合力が養われているような一連の流れだったと、最後に実感する授業でした。

ACCという科目は一言で言うなら、「実際の企業で起きていることを題材に、自分なりに調べ、考え、手を動かしながら分析し、ある形にまとめていく」、それを通して、企業で起こっていることを教室内で疑似体験する場といえるのではないでしょうか。例えば、企業レポート作成は、実際に証券アナリストの仕事の模擬体験となっています。レポートには投資判断こそ含まれませんが、事業内容、業績などに関する分析を行い、文章を書き、図表を作成し、レポートにまとめます。また、リアルな世界を教室で体験するという意味では、多彩なゲスト講師の方々からの学びも多くあります。証券アナリスト、ファンドマネージャー、ESGアナリスト、企業の広報・IR・経営企画・CSR担当の方々など、様々な専門家がゲスト講師としてお話をしてくださいました。最近、個人の資産形成という点でも注目される「ひふみ投信」について、ABSの卒業生でもあるレオスキャピタルワークスの白水さんからお話を伺ったり、アサヒグループホールディングス、味の素、シスメックス等、多くの企業の方が貴重な体験談を語ってくださったり、と印象に残る授業がたくさんありました。一方で、北川先生、佐藤先生の講義、松田 千恵子先生(首都大学東京)のコーポレートガバナンスと経営戦略に関する講義など、これまで書籍で得た知識を頭の中で再整理し、現場で役立つように統合しなおすことができる講義もありました。

実際の仕事でどのように生かしているか

現在、メーカーでIRを担当していますが、コーポレートガバナンス、フェアディスクロージャー規制、ESGへの関心の高まりなど、今後も企業を取り巻く環境は変わっていくと実感しています。そのなかで、ACCで学んだ土台があれば、変化を恐れることなく、引き続き対応力を高めることができるのではないかと、自分のなかで自信につながっています。今後も企業が持続的な成長を目指す中、ステークホルダーとの関係を意識し、社外との対話を行うことはますます重要になるでしょう。そのようななかで、ACCで学んだ、物事に対する見方、考え方は、IR業務から離れても(離れてこそ)役に立つものではないかと考えています。