ベトナム南部・ビンズン省での新都市開発にチャレンジ!

平田 周二さん(ベカメックス東急有限会社 2011年フレックスコース修了)

私は現在ベトナムに赴任し、南部・ホーチミン市近郊のビンズン省(BINH DUONG)での都市開発事業に携わっています。今回多くの先生方のご協力により、ABSの学びから現在のベトナム生活に至るまでを少しご紹介させていただきます。

(1)事業の概要

ベトナム最大の都市である南部・ホーチミン市から北に約30km、車で約1時間の場所に位置するビンズン省は人口約180万人、同国における近年の経済成長を牽引してきた工業化で最も成功を収め、実質GDP成長率は12.5%と全国平均のおよそ2.5倍、進出日系企業も約200社を数える注目のエリアです。同省が2014年までに現在の省都であるトゥヤウモット市から全ての省政府機関等を移転させるプロジェクトが「ビンズン新都市」開発です。新都市エリアの面積は約1,000ヘクタール、東京都中央区と同規模であり、同省傘下の国営企業であるベカメックスIDC社により新庁舎建設等の全体開発が進められています。弊社・東急電鉄は昨年3月、同社との合弁により、同新都市における開発を目的とした「ベカメックス東急」社を設立、資本金は8兆6,000億VND(当時レートで約327億円)と同国では最大級の外資不動産企業となりました。

ベカメックス東急はこのビンズン新都市約1,000ヘクタールのうち、対象街区面積約110ヘクタール(敷地面積約71ヘクタール、およそ東京ドーム15個分)を保有し、「TOKYU BINH DUONG GARDEN CITY(東急ビンズン田園都市)」を今後開発していきます。進出から約1年半が過ぎた現在は、24階建・2棟からなる約400戸の高層コンドミニアム「ソラ・ガーデンズ」の開発を進めています。昨年11月に基礎工事に着手、来年2014年中には竣工する予定です。本年4月には販売を開始し、ベトナムでは先進的な取り組みとなるセールス・ギャラリーを設置した販売などには好評を得ています。その他、東急グループのノウハウを生かし、商業施設や、バス等による新たな交通網も検討中です。ご興味を持たれた方は是非、以下WEBサイトをご覧ください。

※ベカメックス東急ホームページ http://www.becamex-tokyu.com/ja/

※会社設立ニュースリリース http://www.tokyu.co.jp/contents_index/guide/news/120227.html

(2)ABSでの学びから意識したベトナム進出

私とパートナー企業のベカメックスIDC社との出会いは2011年3月に遡ります。ABS修了を控えた当時の私は、東急グループの事業の多くが東急沿線エリアに集中していることに対して、一つの危機感を持っていました、それは日本全国で既に深刻な問題となっている少子化・高齢化によるものです。我々の重要な事業ドメインである東急沿線は、日本でもトップクラスの裕福なエリアであることから現在は非常に恵まれた事業環境と言えます。しかし、少子化・高齢化がこの東急沿線にも影響を及ぼし始めており、既に15-64歳の生産年齢人口は減少局面を迎えています。すなわち、沿線にお住まいを購入(賃貸)し、電車やバスに乗り、百貨店やショッピングセンター、スーパーでお買い物をされる方が、外部要因により減っていくという危機感がありました。

このような認識は、ABSに通わず目の前の業務に日々勤しんでいるだけでは持てなかったかもしれません。しかし、ABS在学中にマネジメント・ゲーム等を通じ、会社の外や、日本以外の世界を意識し始めていた私は「成長」というキーワードをその頃から常に意識していました。よって会社の体力がある今のうちに、新たな成長基盤を探す必要があると感じていました。アンゾフの成長マトリクスで言えば、新商品・サービスを生み出すよりも、既に東急多摩田園都市で大成功しノウハウのある「街づくり」という商品・サービスをパッケージで外国に輸出できないだろうかと考えたのです。ABS在学中の経営史の授業で、「私鉄(民鉄)という業界が成功している事例は日本のみで非常に珍しい」と知った事も、我が社が世界に出れば競争力がある(=競争が起こらない)のでは?!と思ったきっかけとなりました。(実際はそんなに簡単ではないですが)

そこで成長著しいアジア各地に新たな事業候補地が無いだろうかと、プライベートでの訪問を繰り返していたのですが、その訪問地の一つがベトナム・ビンズン省でした。知人の元商社マンの紹介でこのビンズン省に降り立った私は、目の前に広がる大地と事業可能生に目を輝かせていましたが、その日は2011年3月11日、昼過ぎにベトナムで東日本大震災の発生を知ることになります。何とか混乱の最中に帰国した私は、当時の経営計画担当役員にベトナムでの事業についてのレポートを提出し同国での事業検討を訴えました。そしてこの小さな動きが一つの契機となり、2011年6月にベカメックスIDC社が日本を訪問した際、東急多摩田園都市を同社経営陣が視察し、東急電鉄に対し協同での街づくりの依頼があったことから、正式に社内での検討が始まったという訳です。

(3)ベトナムでの私の仕事

そのベトナム、ベカメックス東急で私が今何をしているのか。私の部門はStrategy & Planning Department(日本語では経営戦略部、としています)なのですが、一言でいえば、「街の魅力づくり」です。我々が目指している「街づくりパッケージの輸出」は、住宅や商業施設といった不動産業の分野にだけ限られたものではありません。ビンズン新都市およびビンズン省全体の価値や魅力、都市間競争力を高めることにより、今まで以上にベトナム国において「住みたい」「働きたい」「遊びたい」、選ばれる省(街)にしていくためには、公共交通、通信・ICT(Information Communication Technology)、教育、医療、文化・スポーツ、娯楽(エンターテインメント)等といった各種分野での魅力向上が求められます。

例えば、公共交通の分野では現在、脆弱な公共交通インフラによってバイク等の交通事故や渋滞、環境問題が発生している現状を踏まえて、ビンズン省および周辺地域におけるバス事業を中心とした公共交通システムの開発についての検討を進めています。
※参考 http://www.tokyu.co.jp/contents_index/guide/news/120628-1-2.html

その他にも、通信環境の向上や、ICTを主軸とした街づくり(例えばスマートコミュニティなどと言われる分野も含めます)、初等から高等までの教育機関の誘致、医療環境の充実などに向け日々多くの関係者の皆様と相談・協議を進めています。文化・スポーツ&娯楽の分野では本年6月に日越友好40周年イベントの一環としてJリーグの川崎フロンターレさんを招聘してサッカーイベントを開催しました。
※参考 http://www.becamex-tokyu.com/ja/news/201306/01/news76.html

ABSの学びがどう生きているかと言えば「全てに生かされている」という実感ですが、強いて言えば、マネジメント・ゲームで社長業を体験したことにより、(1)国境・国籍を越えたチームマネジメント力、(2)コミットメントしたことへの達成意欲、(3)体力=必要な時には寝ないで仕事が出来る、については少しだけ自信が持てるかなと思います。

(4)アジアで働き、共に成長するということ

最後にABSの在校生・修了生の方々へのメッセージとして、ぜひ機会があれば成長著しいアジアで仕事をすることをお勧めしたいと思います。当たり前ですが日本とは言葉も文化も違い、毎日暑いこの国ですが、住めば都でして良い所も沢山あります。何より自身が今までとは違う国際環境に身を置くだけでも、“茹でガエル”になる危険性を少しは回避できるだけでなく、信じられないようなスピードで起こる日々の成長や変化を目の当たりにすると、危機意識や当事者意識も磨かれて自身の成長も促進されるように感じます。またベトナムはASEANの地理的な中心地にありますので、この1年半の赴任生活で、ベトナム北部(ハノイ)、中部(ダナン)、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジアといったASEAN地域内の各国には数多く訪問(今日までに約20回以上)することができる環境も非常に恵まれています。

なお最近ではアジア、特にベトナムへの日本からの関心が高まっており、多くのABS関係者の方々が当地を訪問してくださっていることにもこの場を借りて感謝いたします。また年に数回、ABS-Alumni活動の一環としてアジアに散らばるメンバーを集めての勉強会等も開催しており、このような交流がこれから更に広がることもビジネススクールを修了した財産だと確信しています。 このような環境と機会をいただいた全てのご縁に感謝して私はこれからも挑戦していきます。