得難きものを得られたABSの2年間-それを活かす起業と成長

坂本 雅志さん(株式会社スマートウィル 代表取締役社長 2011年度フルタイムコース修了)

1. ABS入学の経緯

私は、投資ファンドから、落下傘的に被買収企業の経営陣として参画しました。そこで新株主への株式売却まで並走し、2009年12月31日の株主総会を持って退任し、社会人人生初の無職に(笑)。30代後半をこうした経営陣として被買収企業経営に携わる仕事に就き、様々な意思決定を秒速で実行してきた(はず)が、売上数千億円規模の企業のCOOとして、様々な意思決定を完璧に正しく適切に出来ていたかと問われれば、「?」な事柄も存在していたと思います。例えて言うなら、「知識・経験」という名のデスクに、一部空っぽの引き出しも存在していたということです。そんなことは噯(おくび)にも出さず、意思決定をするという得も言われぬ罪悪感を持ったこともありました。

新株主への引継ぎが決まり、自身の身の振り方を考えた時に、経営者として、もっと経験を積み重ねていく時間を作らねばという思いもありましたが、まずは、知識・経験の棚卸し、並びに新たなインプットを効率的に行った方が、より良い経営者への近道ではないかと考え、かねてから興味のあったビジネススクールの門を叩くことにしたわけです。

2. 起業の経緯

2010年4月、ABSの門を叩くと同時に、起業しました。幼い頃から、起業には興味があり、いつかは自分もという思いを持っていたため、39歳で、無職となった時点で、当時の流行言葉であった「今でしょ」よろしく、起業を決意するに至った訳です。

しかしながら、何か素晴らしい新規事業アイディアがあった訳でもなく、走りながら考える方式で、起業したため、経営コンサルティング会社を設立し、やれることは何でもやってきました。投資会社時代に担当していた企業がコールセンタービジネスという事もあり、「CRM」というジャンルにフォーカスを当て、人がやりたがらない様な事をやらねば、仕事にならないと言い聞かせ、膨大なデータの処理や、分析業務等を必死で拾っていったのです。そうこうしている内に、時代がそういうものを「ビッグデータ」と呼ぶようになり、ビッグデータを解析するCRMコンサルティング会社としての立ち位置を確立していくこととなりました。

3. 現在の会社・仕事内容

現在、私の会社では、次世代CRMコンサルティングカンパニーとして、下記3つの事業を展開しています。①ビッグデータ活用コンサルティング、②顧客インサイトマーケティング、③コミュニケーションデザイン、このようなビジネス分野に興味を持って頂ければ、幸いです。
株式会社スマートウィルホームページ http://www.smartwill.co.jp

ABSから毎年数名インターンを受け入れており、社員登用も行っているため、是非挑戦して欲しいと思います。また、私自身、CRMの普及活動を積極的に実施しており、ABSにおいても非常勤講師として「CRM戦略」講義を、後期火曜日7時限に担当し、ABSを卒業してから毎年教壇に立たせて頂いています。8年目となる2019年度も開講するので、是非履修いただきたいと思います。ついでに宣伝させて頂くと、「CRMの基本」という書籍も上梓しました。大変好評を得ており、版を重ね、既に5刷12,000部を超えました(2018年現在)。
(詳しくはこちら)

振り返れば、教壇に立つ事や、単著を上梓する事等といった、素晴らしい機会は、全てABS時代にきっかけを頂いたものです。恩師宮副教授をはじめとした素晴らしい教員の方々からの教えや導き、共に学ぶ多様性に富んだ同級生等、得難きものを得られる2年間であったと思います。

4. これから起業に備える目的でABSに進学しようと考えている人に向けて一言

これからABSへの進学を考えておられる方に、僭越ながら申し上げられることと言えば、夢中になって、暗中模索する2年間を過ごしていただきたいということです。学位を得ることを目的とするのではなく、あらゆる可能性を見出すことを念頭に、ご自身がこれから大事にするであろう「何か」を得て頂きたい。自律して、自立する事が求められるのが、MBAであると思います。これは企業経営にも通じることだと痛感しています。その上で、得難きものを得る2年間として頂きたい。そのフィールドとして、ビジネススクールはABSを選択されれば、同窓の仲間として、無上の喜びです。

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